黒猫半島 #003|冬の伊豆で焚き火をする。寒い夜だから火がいい

伊豆と聞いて、冬を思い浮かべる人はどれくらいいるだろう。

青い海。

白い砂浜。

海水浴。

夏休み。

やっぱり伊豆には夏のイメージが強い。

でも俺は最近、夏とはまったく違う伊豆が気になっている。

冬の伊豆だ。

人が少ない。

海が静かになる。

空気が冷たい。

日が落ちるのが早い。

温泉が気持ちいい。

そして夜。

寒いからこそ、やってみたいことがある。

火を焚く。

もちろん、どこの海岸でも勝手に焚き火をするという話ではない。

焚き火が認められているキャンプ場や施設を選ぶ。

そこで椅子を一脚置く。

火を起こす。

海の近くなら、遠くから波の音が聞こえる。

今日はそれでいい。

冬の伊豆で、火を見る。

それだけのために一泊する。

そんな旅があってもいい。


目次

伊豆の冬は「何もない季節」なのか

夏が終わる。

海水浴場が静かになる。

海の家もなくなる。

観光客も少なくなる。

普通に考えればオフシーズンだ。

観光地にとっては、客を呼びにくい季節でもある。

でも黒猫半島では、ここを逆から見る。

人が少なくなるなら、そこに価値はないのか。

50代、60代になった俺たちが欲しいものは、いつも賑やかな場所とは限らない。

むしろ逆だ。

静かな海。

混雑していない道。

落ち着いた宿。

ゆっくり入れる温泉。

誰も急かさない夜。

夏には手に入りにくかったものが、冬になると伊豆に戻ってくる。

だったら冬はオフシーズンではない。

遊ぶ人間が変わる季節だ。


寒いから、火がいい

焚き火なんて、暖かい季節でもできる。

でも俺なら冬にやりたい。

寒い。

だから火に近づく。

薪を一本入れる。

炎が上がる。

少しすると薪が崩れる。

また一本入れる。

やることは、それだけだ。

テレビもない。

YouTubeも見ない。

スマホも、できればポケットに入れたままでいい。

火を見ている。

不思議なもので、それだけで時間が過ぎる。

普段なら何もしないで30分座っていろと言われたら退屈する。

でも火があると座っていられる。

これは大人の遊びとして、かなり優秀なんじゃないかと思う。


焚き火は「何もしない」を成立させてくれる

黒猫半島では、何もしない時間を大事にしたい。

ただ問題がある。

本当に何もしないというのは、意外と難しい。

海辺に座る。

最初は気持ちいい。

10分経つ。

スマホを見る。

20分経つ。

何か検索する。

そのうち、

「次はどこへ行こう」

となる。

結局また動き出す。

ところが火があると違う。

薪を見る。

炎を見る。

炭になっていく。

時々薪を足す。

珈琲を飲む。

また火を見る。

「何もしない」ために、焚き火という小さな仕事がある。

これがちょうどいい。


昼間は冬の海へ行く

焚き火だけのために伊豆へ行くのもいい。

でも俺なら、一日をこう作る。

昼前に伊豆へ入る。

まず海へ行く。

夏なら人でいっぱいになる浜へ行ってみる。

誰も泳いでいない。

当たり前だ。

水着もいない。

パラソルもない。

海の家もない。

聞こえるのは波と風くらい。

そこで少し歩く。

真冬なら無理に長居しなくていい。

寒ければ車へ戻る。

暖かい珈琲でも飲む。

冬の海は、攻略する場所じゃない。

少し見て帰るくらいでいい。


冬の伊豆は、車で走るだけでもいい

夏の伊豆は道が混む。

それも伊豆の夏だ。

でも冬の平日なら、景色が変わる。

海岸線を走る。

気になったところで止まる。

海を見る。

また走る。

急ぐ必要はない。

西伊豆なら夕陽を目指してもいい。

東伊豆なら朝の海もいい。

中伊豆へ入って温泉へ向かうのもいい。

夏は「目的地へ行くための移動」だった道が、

冬は、

走ること自体が旅になる。

これも面白い。


夕方になる前に、火の場所へ入る

冬は暗くなるのが早い。

だから焚き火をするなら、明るいうちに入っておきたい。

今回大事なのは、

どこでも勝手に火を焚かないこと。

海岸だからいい。

河原だからいい。

人がいないからいい。

ではない。

焚き火やキャンプが認められている場所を選ぶ。

直火禁止なら焚き火台を使う。

施設ごとのルールに従う。

これは大人の遊びなら当たり前だ。

そしてできれば、最初から泊まる。

キャンプでもいい。

コテージでもいい。

近くの宿でもいい。

そうすれば夜を急がなくていい。


大げさなキャンプにしなくてもいい

俺はここで、キャンプ道具を山ほど揃えろと言いたいわけじゃない。

テント。

巨大なタープ。

調理器具一式。

テーブル何台。

収納ボックス。

全部並べて、設営だけで一仕事。

もちろん、それが好きならいい。

でも黒猫半島でやりたいのは、もっと軽い。

火を見るために行く。

主役は焚き火だ。

椅子。

焚き火台。

防寒。

温かい飲み物。

簡単な食べ物。

必要な火の道具。

それくらいから始めてもいい。

豪華なキャンプサイトを作ることが目的じゃない。

冬の伊豆で一晩過ごすことが目的だ。


酒は、火のそばで少しだけ

泊まりなら、一杯やりたくなる。

ビールでもいい。

ウイスキーでもいい。

日本酒でもいい。

でも冬の夜なら、俺は熱いものが欲しくなる。

湯気の出るカップ。

火。

冷たい空気。

遠くの海。

これだけ揃えば、かなりいい。

ただし寒い屋外では、酒を暖房代わりにするような飲み方はしない。

酒より先に防寒だ。

暖かい服を着る。

身体を冷やさない。

そして泊まる。

「飲んだから帰れない」ではなく、最初から帰らない夜を作る。

#001の雨の伊東と同じだ。

帰らなくていいと決めた瞬間、旅はゆっくりになる。


焼くものは、豪華じゃなくていい

焚き火となると、すぐキャンプ飯を考えてしまう。

肉の塊。

ダッチオーブン。

凝った料理。

それもいい。

でも俺なら、もっと簡単にしたい。

ソーセージ。

パン。

チーズ。

干物だっていい。

伊豆へ来たなら、地元で何か買ってもいい。

道中の店や地元スーパーで、その日の夜に食べたいものを少し買う。

火で温める。

食べる。

また火を見る。

料理を完成させることが目的じゃない。

寒い夜に、温かいものを食べる。

それで十分だ。


火が小さくなる時間が、一番いい

焚き火は最初が派手だ。

火をつける。

炎が上がる。

薪を足す。

でも俺が好きなのは、そのあとだ。

夜が深くなる。

火が少しずつ小さくなる。

薪が赤くなる。

炎が時々上がる。

周りは暗い。

誰かと二人なら、会話も少なくなってくる。

一人なら、完全に静かになる。

この時間のために来たんだと思う。

何かを達成したわけではない。

有名な観光地にも行っていない。

写真を100枚撮ったわけでもない。

ただ火を見ている。

でも、こういう夜は残る。


一人で火を見る

一人でもいい。

むしろ一人の焚き火は、大人には合う。

誰かを楽しませなくていい。

会話を作らなくていい。

好きなタイミングで食べる。

好きなタイミングで飲む。

火を見る。

考え事をしてもいい。

何も考えなくてもいい。

50代、60代になると、一人の時間は寂しさだけではなくなる。

一人だから成立する贅沢もある。


二人なら、黙っていられる

二人でもいい。

夫婦。

パートナー。

友人。

二脚の椅子を火の前に置く。

ずっと話していなくてもいい。

炎を見ているだけで間が持つ。

若い頃の旅行なら、

「次、何する?」

だった。

大人の旅なら、

「今日はもう何もしなくていいな」

で終われる。

それがいい。


焚き火のあとに温泉があったら、もっといい

ここからが伊豆だ。

火を片付ける。

冷えた身体を温泉へ持っていく。

湯に入る。

これは相当いいはずだ。

冬の外気で冷えた身体に温泉。

夏には作れない気持ちよさがある。

だから黒猫半島では、

冬の海+焚き火+温泉+一泊

を一つの旅として考えたい。

キャンプだけを売らない。

温泉だけを売らない。

海だけを売らない。

全部つなげる。

そうすると「冬の伊豆」という一日になる。


翌朝の海までが、冬の旅だ

朝。

寒い。

外へ出る。

空気が違う。

できれば海を見に行く。

昨日とは違う海だ。

朝日が出ていれば最高だ。

曇っていてもいい。

珈琲を一杯。

朝飯。

温泉にもう一度入れるなら入る。

それから帰る。

一泊二日でやったことは、

海を見た。

火を見た。

飯を食った。

温泉に入った。

寝た。

また海を見た。

それだけ。

でも、それでいい。


「寒い」は欠点じゃない

冬の旅行では、寒さは普通マイナスになる。

暖かいところへ行きたい。

屋内へ入りたい。

外に長くいたくない。

もちろん無理をする必要はない。

荒天ならやめればいい。

寒すぎれば宿へ入ればいい。

でも、

寒いからこそ価値が上がるものもある。

焚き火。

温泉。

熱い珈琲。

熱燗。

湯気の出る食事。

暖かい部屋。

冬の夕陽。

冬の朝。

夏なら当たり前すぎて感じない「暖かい」が、冬にはご馳走になる。


伊豆の冬は、まだ遊び方が余っている

冬の釣り。

冬のツーリング。

冬のキャンプ。

バードウォッチング。

冬の朝市。

夕陽。

星。

月。

温泉。

熱燗。

誰もいない海。

まだいくらでもある。

だから俺は、

「冬だから伊豆へ行かない」

ではなく、

「冬になったら何をしに伊豆へ行こう」

に変えたい。

これができれば、伊豆は夏だけの場所ではなくなる。


観光業が売りにくい季節を、大人の遊びにする

#001では雨を拾った。

#002では人のいない時間を拾った。

そして今回は冬だ。

全部、普通の観光なら売りにくい。

雨。

閑散。

寒さ。

でも50代、60代の側から見れば、価値が逆転することがある。

雨だから温泉がいい。

人がいないから海がいい。

寒いから火がいい。

寒いから温泉がいい。

欠点だったものが、そのまま行く理由になる。

これが黒猫半島で探したい伊豆だ。


寒い夜だから、火がいい。

夏の伊豆もいい。

でも夏だけじゃない。

冬の海へ行く。

人の少ない浜を見る。

夕方になったら、火を焚ける場所へ行く。

椅子を一脚置く。

火を見る。

温かいものを食べる。

一杯やるなら、そのまま泊まる。

温泉に入る。

翌朝、また海を見る。

観光名所を何か所回ったかなんて、どうでもいい。

冬の伊豆で、いい夜を一つ作れたか。

俺なら、そっちを大事にしたい。

雨でもいい。

冬でもいい。

誰もいなくてもいい。

伊豆には、まだ遊び方が残っている。

大人には、大人の伊豆がある。


あなたなら、冬の伊豆で何をしてみたいですか?

焚き火。

釣り。

冬の海。

温泉。

夕陽。

星。

熱燗。

冬のツーリング。

黒猫半島ではこれから、夏には売りにくかった伊豆を、大人の遊びとして一つずつ拾っていきます。


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