黒猫半島 #001|雨の伊東。古い温泉街で昼から呑む

伊豆へ行く日の朝。

カーテンを開けると、雨が降っている。

天気予報を見ても一日中、傘のマーク。

昔なら、ここで少しがっかりした。

せっかく伊豆へ行くのだから、青い海が見たい。
晴れた海岸線を走りたい。
海辺を歩きたい。

雨なら予定を変えようか。

そんなことを考えた。

でも最近は、少し違う。

雨なら、雨でいい。

いや。

せっかく雨なら、晴れた日にやらない伊豆をやってみたい。

そこで今日は伊東へ行く。

海水浴もしない。
観光名所を何か所も回らない。
雨から逃げるために屋内施設を探すわけでもない。

傘を一本持って、古い温泉街を歩く。

そして昼になったら、気になった暖簾をくぐる。

昼から一杯やる。

温泉に入って、そのまま泊まる。

たったそれだけ。

でも50代を過ぎた今なら、そんな伊豆の一日が妙に面白そうに思える。


目次

「雨の伊豆=ハズレ」をやめてみる

伊豆旅行と雨は、どうも相性が悪いことになっている。

旅行の数日前から天気予報を見る。

晴れなら安心する。

雨なら、

「どうしよう」

となる。

そして検索する。

「伊豆 雨の日」
「伊東 雨 観光」
「伊豆 雨でも楽しめる」

すると、雨に濡れずに楽しめる場所が出てくる。

もちろん、それもいい。

でも黒猫半島では別のことを考えてみたい。

どうして、そんなに雨から逃げるんだろう。

伊豆には海がある。

山がある。

温泉がある。

古い町がある。

漁港がある。

宿がある。

酒場もある。

雨が降ったからといって、それらが全部消えるわけではない。

むしろ雨が降ったことで、晴れた日には気づかなかったものが前に出てくることがある。

濡れた路地。

少し暗くなった昼間の町。

傘に落ちる雨音。

温泉から上がる湯気。

暖簾の向こうの灯り。

雨粒の付いた酒場の窓。

だったら雨そのものを、伊豆の遊びにしてしまえばいい。


なぜ、雨の日に伊東なのか

伊東には海がある。

もちろん晴れた日の海もいい。

でも伊東は、海だけを目的にしなくても一日を作れる。

温泉があって、町があって、昔から続いてきた伊豆の時間が残っている。

車で観光地から観光地へ移動し続けなくてもいい。

むしろ今日みたいな日は、車を置いて歩きたい。

傘を差して町へ出る。

雨の日は、不思議と歩く速度も遅くなる。

晴れた日なら通り過ぎてしまう建物を見る。

古い店を見る。

路地を覗く。

「ここ、何だろう」

そう思ったら少し寄り道する。

予定表には載っていなかった時間だ。

黒猫半島が欲しいのは、こういう時間なんだと思う。


雨の温泉街は、少しくらい古い方がいい

ピカピカに整備されたリゾートも悪くない。

でも雨の日だけは、少し古い町がいい。

古い建物。

昔からありそうな看板。

狭い路地。

店先の庇。

雨で濃くなった道路の色。

そこを傘を差して歩く。

俺は、こういう町に来ると目的地を決めすぎない方が面白いと思っている。

Googleマップで評価4.3の店を探して一直線に向かう。

それも便利だ。

でも今日は違う。

自分の目で、入りたい店を探す。

外から店を見る。

暖簾を見る。

メニューを見る。

中から少し声が聞こえる。

なんとなく、

「ここでいいな」

と思う。

旅先では、この「なんとなく」が意外と大事だ。


昼から呑む。

時計を見る。

まだ昼だ。

だからいい。

一杯目はビールでもいい。

雨の日なら日本酒でもいい。

熱燗にはまだ少し早い季節なら、冷酒でもいい。

つまみを一つ頼む。

刺身でもいい。

干物でもいい。

地元の魚があれば、それを頼んでみる。

別に豪華な海鮮コースでなくてもいい。

酒一杯と、うまい肴が一皿。

それで十分だ。

外では雨が降っている。

店の中は少し暗い。

昼間なのに酒を飲んでいる。

仕事でもない。

予定もない。

誰かに急かされることもない。

こういう時間は若い頃より、今の方がうまく楽しめる気がする。


昼呑みすると、旅を欲張れなくなる

昼から酒を飲むことには、一つ大きな効能がある。

もう車を運転できない。

だから今日の移動は終わり。

これは不便じゃない。

俺にはむしろ、旅を強制的にゆっくりさせる装置に思える。

伊豆へ来ると、つい欲張る。

せっかくここまで来たから。

次はあそこへ。

その次はここへ。

夕方までにもう一か所。

せっかくの旅行だから。

そうやって一日中移動する。

ところが昼から一杯やってしまえば、もう終わりだ。

今日はこの町にいる。

それで決まり。

もちろん、飲んだらその日は運転しない。

だったら最初から、そのつもりで宿を取っておけばいい。

すると酒がさらにうまくなる。


「今日は帰らない」が、大人の伊豆を作る

昼から一杯やる。

外は雨。

もう車には乗らない。

そして、

今日は帰らない。

この瞬間から、旅行の空気が変わる。

急ぐ必要がなくなる。

夕方の渋滞も気にしなくていい。

何時までに家へ帰らなければ、もない。

時計を見る回数が減る。

昼呑みを終えたら、次は温泉へ行けばいい。

酒を飲んだ直後に無理をする必要はない。

少し町を歩く。

雨宿りしてもいい。

珈琲を飲んでもいい。

宿へ早めに入ってしまってもいい。

雨の日は、予定の空白が似合う。


雨の日の温泉は、晴れの日と少し違う

雨の日に温泉へ入る。

これがいい。

特に露天風呂。

屋根の向こうに雨が落ちる。

木々が濡れている。

湯気の向こうが少し霞んでいる。

晴天の露天風呂とは別の景色になる。

雨音を聞きながら湯に浸かる。

昼間から飲んだ身体を休ませる。

何も考えなくていい。

「このあとどこへ行こう」

も必要ない。

このあと宿へ戻るだけだからだ。

雨の日の伊豆は、予定を減らせば減らすほど良くなるのかもしれない。


雨の日は「泊まる場所」の選び方まで変わる

ここが今回、黒猫半島で確かめたいところでもある。

晴れた日の旅行なら、宿は寝る場所でも成立する。

朝から外へ出て、一日遊んで、夜に帰ってくる。

でも雨の日は違う。

宿にいる時間が長くなる。

だったら宿選びも変わる。

俺なら雨の日は、

早く入りたくなる宿

を選びたい。

温泉がある。

部屋で長く過ごせる。

できれば窓の外に伊豆らしい景色がある。

海でもいい。

山でもいい。

町でもいい。

雨の日に部屋へ戻って、

「さて、何をしよう」

では困る。

何もしなくても気持ちいい宿がいい。

これは豪華さとは少し違う。

広い部屋だからいいとも限らない。

高級旅館だからいいとも限らない。

雨音を聞いていられる。

風呂へ何度でも行ける。

椅子に座って酒を飲める。

本を読める。

窓の外をぼんやり見られる。

50代、60代の旅なら、こういう宿に金を払う理由は十分あると思う。


シーズンオフなら、さらに面白い

ここからもう一つ考えたい。

雨。

平日。

海水浴シーズンではない。

一般的な観光なら、あまり歓迎されない条件が重なる。

でも俺には逆に魅力的に見える。

宿のロビーが静か。

温泉も混雑していない。

海にも人が少ない。

町も落ち着いている。

観光地に来たのに、人から少し離れられる。

若い頃なら、寂しいと思ったかもしれない。

今なら、

「最高じゃないか」

と思う。

ホテル側から見れば閑散日かもしれない。

でも静かな旅をしたい大人から見れば、価値の高い日になる。

ここには何かありそうだ。

黒猫半島で、これから追いかけてみたい。


夜になったら、もう一度町へ出る

温泉に入った。

少し休んだ。

夕方になった。

まだ雨が降っている。

だったら夜も悪くない。

傘を差して、もう一度町へ出る。

昼とは違う。

灯りがついている。

雨に濡れた道路へ店の明かりが映る。

昼に入った店とは違う店へ行ってもいい。

古い居酒屋。

小さな酒場。

場合によっては、少し勇気を出して古いスナックの扉を開けるのも面白い。

旅先だからできることがある。

誰も自分を知らない。

一杯飲んで、少し話して、宿へ帰る。

雨の温泉街の夜そのものを遊ぶ。

これも黒猫半島で一本、ちゃんとやりたいテーマだ。


一人でもいい。二人でもいい。

この旅は一人でも成立する。

むしろ一人なら面白い。

入りたい店へ入る。

食べたいものを食べる。

疲れたら宿へ帰る。

誰にも相談しなくていい。

二人なら、また違う。

雨の町を二人で歩く。

一軒入る。

温泉へ行く。

部屋へ戻る。

無理に会話を続けなくてもいい。

雨音がある。

二人で何もしない時間を過ごす。

50代を過ぎた二人旅なら、そんな時間も悪くない。


翌朝、雨が上がっていたら海へ行く

翌朝。

カーテンを開ける。

雨が上がっている。

だったら海を見に行けばいい。

昨日は一日、温泉街にいた。

だから朝の海が少し新鮮に見える。

まだ雲が残っているかもしれない。

海も真っ青ではないかもしれない。

それでいい。

朝の海を少し歩く。

珈琲を飲む。

朝飯を食べる。

そして帰る。

観光名所はいくつ回った?

ゼロでもいい。

昨日やったことと言えば、

雨の町を歩いた。

昼から酒を飲んだ。

温泉に入った。

宿で休んだ。

夜にまた一杯飲んだ。

それだけ。

なのに、妙に記憶に残る。

俺がこれからやりたい伊豆は、こういう伊豆なのかもしれない。


雨の日に何をするか、ではない。

雨の日の旅行というと、

「雨でもできること」

を探してしまう。

でも、それでは雨はずっと邪魔者のままだ。

黒猫半島では逆にしたい。

雨だからやる。

雨だから温泉街を歩く。

雨だから昼から呑む。

雨だから露天風呂へ行く。

雨だから早く宿へ入る。

雨だから部屋で何もしない。

雨だから夜の町がきれいに見える。

そう考えると、雨は旅行を邪魔していない。

旅の遊び方を変えているだけだ。


雨の伊東、これは一つの「大人の遊び」になるかもしれない

今回やってみたいのは、単なる伊東観光ではない。

雨 × 古い温泉街 × 昼呑み × 温泉 × 一泊。

これを一つの遊びとして考えることだ。

もしこれが面白いなら、伊東だけじゃない。

雨の熱海。

雨の下田。

雨の修善寺。

雨の伊豆長岡。

まだいくらでもできる。

さらに、

雨の露天風呂。

雨の漁港。

雨の古いホテル。

雨のドライブ。

雨のスナック。

雨の海。

「晴れたら行きたい伊豆」ではなく、「雨が降ったら行きたくなる伊豆」。

そんなものが本当に作れるのか。

黒猫半島で試してみる。


大人には、大人の伊豆がある。

海水浴をしなくてもいい。

観光地を全部回らなくてもいい。

晴れていなくてもいい。

雨の伊東へ行く。

古い町を歩く。

昼から一杯。

温泉。

宿。

夜になったら、また一杯。

翌朝、海を見る。

それだけの一泊。

俺は、かなり好きだ。

次に伊豆旅行の日が雨だったら、

「ついてない」

ではなく、

「じゃあ、何して遊ぼうか」

と考えてみたい。

伊豆には、まだ遊び方が残っている。

雨の日にも。

冬にも。

誰もいない海にも。

大人には、大人の伊豆がある。


雨の日の伊豆なら、あなたは何をしてみたいですか?

雨の露天風呂か。

古い温泉街で昼呑みか。

雨の海を眺める宿か。

それとも、雨音を聞きながら何もしない一泊か。

黒猫半島ではこれから、雨だから面白くなる伊豆も探していきます。

雨の伊東、そのまま一泊してみませんか。

昼から一杯やって、温泉に入ったら、今日はもう帰らない。
雨の日だからこそ、ゆっくり過ごせる伊東の宿を探してみてください。

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